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映画【さ行】 ブログトップ
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スリー・ビルボード [映画【さ行】]

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もうすぐアカデミー賞の授賞式ですね。
作品賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞(2人)、作曲賞、編集賞のノミネート作品です。
脚本賞は絶対受賞しそうな今まで観たことがない展開でした。


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十代の娘をレイプされ殺された母親ミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マークドーマンド)は7か月たっても犯人をみつけられない警察に業を煮やし、娘が殺された場所に真っ赤な看板を建てることを思いつきます。
3枚のビルボード(野外広告看板)が建ったことから始まる物語です。


場所はアメリカ・ミズーリ州。
ミルトレッドの住む狭い町では名指しをされた警察署長(ウディ・ハレルソン)はなかなかの人格者であるようです。
しかも癌を患っていて余命がわずかであることも町中の人が知っているという環境です。

署長を慕っている部下や、病気に同情している住民も多くそんな署長を名指しで攻撃するような看板を建てたミルトレッドは一夜にして町中の嫌われ者になってしまいます。


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町中の人から嫌がらせを受けながらも決して自分の主張を曲げない強い女性ミルトレッド。
事情を聴きに来た署長は犯人の手掛かりが全くない事件であったことと実は自分は癌なのだと打ち明けますが、そんなことは町中の人が知っているから関係ない、早く犯人を捕まえろと言い放ちます。


そんな彼女が被害者の母で可哀想な人かと思うと実はそうでもないのです。
ストーリーが進むと彼女と娘の関係も良好じゃなかったこと、あの日の事件を避けることもできたんじゃないかと思えるシーンも出てきます。


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署長のことを尊敬するあまりにミルトレッドや広告会社にも暴力をふるい嫌がらせを繰り返す警察官のディクソン(サム・ロックウエル)も弱いものいじめばかりの悪い奴かと思えばそうとばかりは言いきれません。


そんな中署長が病気を苦に拳銃自殺を図ってしまうことももちろん、ディクソンさえも観てる人全員の予想を裏切る行動と展開になっていくのでこれがまた面白いんです。

憎しみと愛とが渦巻き、どの人が善人で悪人なのかもなく、どんなラストへと向かうのか。

町で起こるたくさんの事件も解決される様子もなく、ラストのディクソンとミルトレッドの会話にもまた、銃規制がなかなか認められないアメリカの「自分は自分で守るしかない」という現実がみえてくる映画でした。


脚本と監督はマーティン・マクドナー監督。


ベネチア国際映画祭では脚本賞を、トロント国際映画祭では観客賞を受賞。

主演のフランシス・マークドーマンドは「ファーゴ」でオスカーに輝いている女優さんですがすごい威圧感です。
グランド・イリュ―ジョンにも出演の署長役のウディ・ハレルソンとその部下役のサム・ロックウェルが二人で助演男優賞にノミネートされていることでもこの映画の面白さが伝わってきますよね、一人なんか選べないってとこでしょう。
ぜひご覧になってください。おすすめです。





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シネマ歌舞伎 ヤマトタケル [映画【さ行】]


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映画館で鑑賞できる月イチ歌舞伎。
今年度も頑張って観ています。


「阿弖流為」は昨年2回観たのと「喜撰/棒しばり」は時間が無くてダメでしたが、「連獅子/らくだ」「東海道中膝栗毛(やじきた)」「四谷怪談」ときて今回は「スーパー歌舞伎ヤマトタケル」を観ることが出来ました。

でも色々見た中でもやっぱりスーパー歌舞伎は格別って思うんです。


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三代目市川猿之助のために哲学者・梅原猛が書き下ろし、1986年の初演で「スーパー歌舞伎」という新しいジャンルを打ち立てた「ヤマトタケル」。
三代目の甥である四代目市川猿之助が挑んだ2012年の公演の映像化です。


第12代景行天皇(市川中車)の皇子の小碓命(おうすのみこ=のちにヤマトタケル:四代目猿之助)は父・帝に対する謀反を密かに企む兄・大碓命(猿之助二役)をいさめている途中に謝って殺してしまいます。


正直に言えばいいものを、父帝には兄への名誉のため本当のことを告げずに自分が兄を殺してバラバラにして捨てたとだけを話すのです。


兄皇子を可愛がっていた父・帝はびっくりして小碓を処刑しようかとも思いますが、西国の熊襲(くまそ)を成敗してくるよう命令を下すのです。


熊襲はヤマト王権に抵抗する人々で少年の小碓には手ごわい相手。

西国に着いた小碓はヤマトからきた踊り子と称し女装して油断させ、熊襲を仕切る兄弟を殺します。

小碓ったらかなり卑怯なんだけど、それでも敵の弟健は小碓の力を称賛して『俺たちの名前を継いでほしい、これからは「ヤマトタケル」と名乗ってくれ』と頼み切り殺されます。

了承した小碓はその後はヤマトタケルと名乗ります。


熊襲を退治したヤマトタケルは「父に褒めてもらえる」と喜んでヤマトに帰るのですが、今度はすぐにも東国の蛮族を退治しろと言われます。
「どうしても父は私に死ねというのか…」と嘆きつつも、叔母である伊勢の斎宮・倭比売命(やまとひめのみこと)のいる伊勢へ立ち寄って、草薙剣という宝刀と困ったときに使いなさいと布袋にいれられた何かをもらうのです。


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その後、叔母からもらった宝刀と袋にあった火打石のおかげで東の国も成敗したヤマトタケル。


私の中ではヤマトタケルって兄ちゃんはバラバラにして殺すわ、女装して熊襲をだまして殺すわ、卑怯者的イメージだったんですけどこの舞台では父を想い、父を殺そうとした兄を誤って殺してしまってもそのことを告げられず、罰として西に東にと戦に出されるナイーブな青年になっていました。


とにかく父に認めてもらいたい、そしてヤマトの国で暮らしたい。
優しい青年のそんな悲痛な想いが後半は特に叫びとなってもう本当に切なくて切なくて。


結局生きてはヤマトの国に戻れなかったヤマトタケルは最後は白い鳥となって空高く飛んでいきます。


豪華な衣装はもちろん、シーンによって髪型も変わる細やかさ。
ラストの白い鳥はいうに及ばず、東国での火攻めにあった時の火の粉の舞いのアクロバティックな演出。
なによりも猿之助の悲痛な演技がもう見事過ぎです。


敵キャラの皆さんも家来の方々も総てが魅力的に描かれていて本当に面白くて、特に最後に戦いヤマトタケルの死の原因ともなる白い大猪たちとの戦いは壮絶です。

自分たちを山奥へと追い込んだヤマトの国への恨みと怒りで刺し違えてもヤマトタケルを殺したいと襲い掛かってくる爺ちゃんと婆ちゃんの山神さま。

熊襲もそうですけどこういった権力から虐げられた人々の哀れさもしっかり語られているのはいいですね。


最初の兄を殺すこととなった一人二役の早変わりも弟の白と兄の黒の衣装の猿之助。
映像で観ていてもどうなって入れ替わっているのかがわからないほどのあざやかさ、前半の見せ場です。


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途中休憩が2回あり、2回目の休憩でほっとしていると前の席の方がおにぎりをむしゃむしゃ食べだして、ふと時計をみたら12時半でした。
10時から始まって2/3で12時半。あまりに面白くて時間が経つのを忘れてしまっていたけどこれはやはり歌舞伎同様弁当持参でこないとダメかしらと友人と笑っちゃいました。4時間ですものね。


大阪では1週間の上演期間が終わりましたのでもう観れませんが歌舞伎を見たことがある方もない方にもご縁があればぜひどこかで見てもらいたい作品です。


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猿之助さん、骨折早く完治されますように。


映画の最初に四代目猿之助と俳優・香川照之の九代目市川中車の襲名挨拶あり。


ラストの総出者が並んだ挨拶では三代目猿之助改め二代目市川猿翁が真ん中に立ち、中車、4代目猿之助と手をつなぐ場面では過去にいろんなことがあった父と子・甥と叔父・従兄弟である三人の人生に鳴りやまぬ観客からの拍手。
親子の関係を問うこの舞台は最後の最後まで感動的でした。




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しゃぼん玉 [映画【さ行】]

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第115回直木賞受賞の作家、乃南アサさんの小説が原作。
國村隼さんの映画の次は市原悦子さんを観たい!と思い、鑑賞。
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幼い頃に親は離婚、その後はひったくりや傷害事件を繰り返していた青年・伊豆見(林遣都)が宮崎の山奥の村に逃げ込んでくる。

伊豆見は山道を歩いていると偶然バイク事故で道端に投げ出され助けを求めているスマ(市原悦子)と出会い、それが縁で彼女の家に居候をすることとなる。
 
一人暮らしのスマの家の中の引き出しを物色し、お金があれば逃げ出そうと思っている伊豆見。

しかしスマの作る暖かいご飯、熱いお風呂と、今までは味わったことのない心地よい生活に安らぎを覚え始める。

スマの孫と勘違いした村人たちからも暖かく接してもらい、もうすぐ始まるという村祭りの手伝いをするうちに10年ぶりに村に帰ってきたという美和(藤井美菜)とも知り合う。

少し陰りのある美和に好感を持ち仲良くなるうちに、彼女は都会での通り魔事件の被害者であることがわかり、自分が起こしてきた今までの罪の重さを感じ始める伊豆見だった。
 
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婆ちゃんに、自分の親は離婚してその親にも捨てられた過去を話す伊豆見。
きっと自分の親もクズでその親もクズで・・・・だから自分はこんな生き方しか出来ないのだと。

でも実は婆ちゃんにもひとり息子がいて、都会に出ていって離婚していて、時々村に帰ってきては婆ちゃんに金の無心と暴力をふるっていることがわかるんです。

都会に住んでるとスマの息子も伊豆見もクズになり、田舎に住んでる人はみんな純真で優しい、みたいな語られ方にちょっと違和感もあったけど、なんといっても市原悦子さんのあの日本昔話の声で「坊」って呼んでもらったらどんな悪人も改心しそうです。
(あ、でも実の息子は改心しませんでした。)
 
 宮崎の山の村の風景が美しく、方言も優しく、村の婆ちゃんたちが作って持ってくる料理も美味しそう。
平家の落ち武者伝説が残る村なのでエンドロールで村の名前と同じ「椎葉」と「那須」(那須与一の弟が住んだという伝説が残る村らしい、なので末裔!?) さんの名字がかなり並んでいて、村の方の協力もあって出来上がった映画なんだなってこともわかりました。
 
人が正しく生きる為には周りの人からの期待と信頼と、少しの自信なんだなと思った暖かな映画でした。
 
 監督・脚本:東伸児
 
 
 
 

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シネマ歌舞伎 スーパー歌舞伎II ワンピース [映画【さ行】]

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まさかの歌舞伎化!
ついに映画館に登場!!

世界累計発行部数が3億2000万部を超える尾田栄一郎原作の国民的人気漫画「ワンピース」を歌舞伎に大胆にアレンジ。
2015年の10月と11月に東京新橋演舞場、16年3月に大阪松竹座、4月に福岡博多座で公演を重ね、20万人を動員した舞台を今週(10/22土から11/11金)≪月イチ歌舞伎≫を上演する映画館で観ることが出来ます。

スーパー歌舞伎とは3代目市川猿之助が1986年 に始めた現代風歌舞伎で「ヤマトタケル」「新・三国志」などがあります。
スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)「ワンピース」は4代目市川猿之助の制作・主演です。
横内謙介脚本演出、主題歌はゆずの北川悠仁。
新橋演舞場・平成27年度(題70回)文化庁芸術祭賞・演劇部門関東参加公演の部で、優秀賞を受賞しています。

主演は4代目市川猿之助。ルフィとハンコック、ジャンクスの一人三役。

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原作エピソードの中でも激闘が繰り広げられる「頂上戦争編」がベースです。
原作だと51~61巻あたりなんだとか。

秘宝ワンピースを探す航海の途中の海賊のルフィとその仲間たち麦わらの一味。
シャボンティ諸島での海軍との戦いでちりじりとなってしまう。
そんな時、黒ひげによって捕まった兄エースが処刑されると知らせを受けたルフィは、エースを助けるためにボン・クレーと海軍との戦いに挑むのだが・・・。

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歌舞伎ですから着物ベースの衣装ですけど、でも洋風なのです。
パンチパーマでサングラスのお方も出てきてメイクも衣装もなかなか面白かったです。
スナックママ風のピンクの着物姿のナミだけはこれはだれ?って感じでしたけどね。
チョッパーは最初はウソップが持ってるぬいぐるみでした。

頂上決戦編は麦わら一味は吹き飛ばされてちりじりになってしまいます。
なのでメンバーの助けはなく、ルフィは一人海底監獄に兄のエース救助に向かいます。

俳優の福士誠治さんが兄のエースを演じていました。
スーパー歌舞伎って、歌舞伎役者さん達だけじゃないんだ、って型にはまらない配役にも感心しつつ、中盤の戦いでは舞台に滝が作り出されて、滝にうたれながらの戦いがこりゃすごい、どうやってあの水が舞台にとびっくり仰天。
そして宙にも浮いてしまうルフィには会場も大喝采、楽しませてくれますよね。

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「海賊王に俺はなる!」ってセリフで誰もが知るワンピースの世界。
歌舞伎になっても少年週刊ジャンプらしい友情・努力・勝利の要素満載です。

ゴムゴムの実を食べたルフィは手がにょろにょろ伸びますが、黒子さん達の腕をつないで伸びているように見せたり、歌舞伎独特の鮮やかな立ち回りや見事な見得を何回も切ってくれますし、歌舞伎ファンもなっとくの舞台になっていると思いました。
プロジェクションマッピングもたくさん使ってお話が進んでいくので新感覚歌舞伎です。
とことん楽しんで制作されてるって感じです。

入手困難でちょっとお高めの歌舞伎をお近くの映画館で観れるのはいいですね。
来年新橋で再演が決まったと映画の最後に出てましたから、これで気になったら本物を観に行くのもいいですね。

 

 


シン・ゴジラ [映画【さ行】]

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話題のシン・ゴジラを観た。
2回観た。
なんでって、1回観たくらいじゃよくわかんないのだもの。
2回観たけど実はまだよくわからない。
みんなそうだから興行成績がどんどん伸びてるのね。
53億円を超えたって話、どこまで伸びるんだろう。


「お前たちも好きにしろ、俺も好きにする」
謎のことばと暗号を残して東京湾のクルーザーから消えたマキ教授。
同じ頃、巨大不明生物が羽田沖の海中から突然出現。

東京アクアラインが崩壊、逃げ惑う市民。
超早口でなに言ってるかわかんない政治家や官僚。
駆除するか捕獲するか、はたまた追い出すか?
法律がない、前例がない。

余貴美子の真っ黒なアイライン。
アメリカからの要人石原さとみ「あれはゴゥズィィィラよ」
長谷川博已「ん~、ゴジラにしよう」

果てしなく会議、会議、会議。
自衛隊:総理、撃ちますか、許可求む!
官僚:総理、ご決断を!
総理:そうか、仕方ないな。
自衛隊:総理、人がいます!
総理:攻撃、中止。
(観客:え、ええ~?)

ゴジラ:下あごパカーン!放射能ぐわー。
口からビーム!背中からもビーム!!ビーム!!!ビーム!!!!

どんどん巨大化すれゴジラを止めるのは、もう「かの国からの原子爆弾投下」しか方法はないのか!?

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主人公は内閣官房副長官の矢口(長谷川博已)。
羽田沖で何かが起っている時にネット情報で巨大生物の存在を疑うも、大杉蓮演じる総理大臣ほか誰も相手にしちゃくれない。
海底火山だろ、きっと、そうだそうだ。

しかしそれが本当に巨大生物だとわかっても有識者を集めてのミーティングで無駄な時間は過ぎていき・・・ああ政治家ってきっとこんな感じなんだろうなあって観客は苦笑い。

今撃つしかないでしょ!?って時も判断は出来ない総理。
そんな役に立たない政治家たちがごっそり乗ったヘリが墜落。
そこから若い方々が上下関係なしでゴジラと戦っていくのね。
肩書がどんどん変わって画面の下に、注釈が画面の右に左にとガンガン出ては消えていく。
この速さからして読ませる気はないわね、気にしなくてもいいのね。

ゴジラはなんと進化していきます。
しっぽが海の中からちょっとだけ見えてる第一形態。
ほとんど姿は見えず。

多摩川河口から地上に上がってエラがあり両生類みたいな形の第二形態。
途中でエラから血をどばーっと出します、あれで肺呼吸になったのかもしれません。

やがて北品川あたりで少し大きくなって小さな手がにょきっと生え二本足で立ちあがる第三形態。
ここで撃ってればいいのに攻撃は中止で、海に逃げちゃいます。

そして倍以上に巨大化してしまった第四形態、ポスターはこれです。
眼も変わってるの。
両生類の時は濁った白い眼なのに大きくなったら怪獣の眼に。
鎌倉から上陸し北上していくゴジラ。
東京はゴジラに破壊され東京駅でストップ。
第四形態のゴジラには自衛隊のヘリ、戦車からの攻撃では全くダメ、米国の力を借りることとなる。
国連の原爆攻撃の前に矢口はゴジラを凍結させる作戦をたてるのだが・・・。

ゴジラは体内に原子炉状の器官があってあたかも動く原発。
そんなゴジラがなぜ日本のしかも東京に進路をとるのか。
日本はゴジラを凍結させるという方法で共存していくしかない。
この映画は東日本大震災を暗示しているとも言われています。

マキ教授もどうなったのかわかんないし、ラストシーンにもあれはなんだ?ということで、まったく謎が多い映画でした。
ぜひ大きな画面の劇場でどうぞ。

総監督・脚本・編集:庵野秀明 監督・特技監督:樋口真嗣  
日本初のフルCG・ゴジラのモーションキャプチャは野村萬斎。
そしてゴジラの主題曲はやっぱり名曲ですね。


シネマ歌舞伎 歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉 [映画【さ行】]

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2015年に新橋演舞場で上演の「歌舞伎NEXT阿弖流為」を収録したものです。

シネマ歌舞伎とは松竹株式会社が制作する映像作品の名称で、歌舞伎の舞台公演を好感度カメラで撮影しスクリーンで上映するものです。

いいところは役者さんの表情、メイク、衣装のすばらしさが間近で観れること。
ライトで常に照らされてあんなにも汗をかきながら演じているのか、かなりの重労働なんだろうなと思ったりします。

残念なとこはアップが多いので全体が観れない事、映画だと拍手が出来ない事、でしょうか。
でも映画にしてはお高めの2100円のチケット代もけっして惜しくない面白さでした。
生で観たかったと思いました。

特別興行で大阪ステーションシネマにて鑑賞。

1日1回の上映で朝9時から途中10分の休憩あり、12時20分まで。
時間も長いのですけど2転3転するストーリーにドキドキです。
新感線の舞台はよく観ますが歌舞伎って観たことがないのでお話についていけなかったらどうしよう、なんて上映前の心配も吹っ飛びました。とにかく面白いし、音と光もすごいです。

日本人ですけど見得を切ってる姿にもなんだか感動。
高速の殺陣もあればスローモーションで演じるところもありで、着ぐるみのクマが出てきたり・・・。
でもこの左耳に花をおしたクマ子に最後は泣かされちゃうなんてわかんないもんですね~。

 

お話は平安時代のはじめの頃。
日本統一を目指す大和朝廷は北の民・蝦夷の討伐をもくろんでいます。
都では立烏帽子という輩が暴れており、そこに現れた正義感の強い青年・坂上田村麻呂(中村勘三郎)と、名前を失くした男・北の狼(市川染五郎)が出会い友情に似た感情が生まれます。

実は北の狼は蝦夷の長の息子・阿弖流為であり、故郷で神の使いを殺した罪で記憶を消されて追放された身の上でした。
しかし恋人の立烏帽子、鈴鹿(中村七之助)と都で偶然出会ったことで記憶が戻り、ふたりは蝦夷を守るため帰郷することになります。
一方、実はいいとこの坊ちゃんだった坂上田村麻呂。
大和朝廷軍のリーダー・日本初の征夷大将軍に任命され、阿弖流為討伐で蝦夷に向かうこととなります。
ふたりの若者の運命はどうなっていくのか、宿命の対決の日も近くなり・・・・というところです。

「千と千尋の神隠し」みたいに本当の名前を奪われるとか、「もののけ姫」みたいに神様を殺しちゃったり、ジブリのアニメの世界みたいな世界観。
平安時代って神や妖怪、もののけが人と近い関係なんですね。

お話も先が読めずいい人かと思ってた人が実は悪人だったり、北の民なのに命が惜しくて阿弖流為を裏切るただの脇役だと思っていた蛮甲(片岡亀蔵)がヒール役で大活躍。

大阪では先週で終わりましたけどこれからみれる地域にお住まいならぜひご覧ください。

 


シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ [映画【さ行】]

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マーベル・コミック原作の「キャプテン・アメリカ」シリーズ3作目です。
「アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン」から1年後のお話となります。

元々そんなに好きなジャンルではないし、アメコミにもうそろそろ飽きてきたかな・・・なんて思って観に行きましたがごめんなさい、ストーリーもアクションもすごく面白かったです。
やはり続けてみることは大切ですね。
それにしてもマーベル映画、恐るべし。

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出来れば各シリーズ(キャプテン・アメリカ、アイアンマン、アベンジャーズ、アントマンなど)は多めに観ておいた方がいいです。
登場人物の性格とか生い立ちがわからないとこの映画だけだとわからない部分も多いかもしれません。

「アベンジャーズ・エイジ・オブ・ウルトロン」の戦いのあと、キャプテン・アメリカ=スティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)率いるアベンジャーズはナイジェリアでヒドラの残党と戦っていたが、自爆を図ったヒドラメンバーを阻止しようとしたワンダ(エリザベル・オルセン)の超能力で一般市民が巻き込まれ多数の死者を出してしまう。

このことにより世界から批判を浴びることとなったアベンジャーズ。
常人を超えたヒーローやスパイから結成されたアベンジャーズを国連の管理下に置き、無許可での活動を規制しようという動きが出てくる。

同じ頃、過去のアベンジャーズの戦いで犠牲になった息子をもつ母親から責められたアイアンマン=トニー・スターク(ロバート・ダウニ―・Jr)。
ショックをうけたアイアンマンは国連の指示に賛成。
しかし、キャプテン・アメリカは「自分たちで判断し行動する権利が奪われる」と署名には反対、アベンジャーズを代表するアイアンマンとキャプテン・アメリカの二人の意見が真っ二つに分かれてしまう。

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やがてオーストリアのウィーンでアベンジャーズを国連の管理下に置く「ソコウィア協定」 の署名式が執り行われることとなる。
しかし署名式会場で爆弾テロが発生してしまい、演説中のワカンダ国王がその犠牲となる。

テロの犯人としてバッキー・バーンズ=ウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)が国際手配となるが、バッキーはキャプテン・アメリカの親友であり幼馴染。

バッキーを信じるスティ―ブは洗脳状態から覚めたバッキーの話しを聞き、シベリアにもバッキーとは別のウインター・ソルジャーが冷凍保存で眠っていることを知る。
彼らの復活と新たなテロを阻止するため、キャプテン・アメリカはファルコン(アンソニー・マッキー)、ホークアイ(ジェレミー・レナー)、ワンダ、アントマン(ポール・ラッド)たちと航空機を奪ってシベリアに飛ぼうとする。

しかしそんなこととは知らないアイアンマンは、ウォーマシン(ドン・チードル)、ナターシャ(スカーレット・ヨハンソン)、ウィジョン(ポール・ベタニー)、ブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマン)、スパイダーマン(トム・ホランド)らと飛行場で激突するのだった。

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飛行場での内戦〝シビル・ウォー”の映像はものすごいです。
君たち意見が分かれたとしても仲間でしょ?と思うくらい本気モードで壮絶。
でも基本いい人対いい人の戦いなので怪我人は出るけど死人は出ません。
ソーとハルクがいないのはこの二人がいたら内戦くらいじゃすまないからでしょうね。

さて、今回からアベンジャーズに参戦したアントマン、スパイダーマン、ブラックパンサー。

アリさんとクモさんと豹さんなんですけど・・・笑、アリさんはお笑い担当ってとこでしょうか。
アイアンマンにはスル―されるし、戦いの中にも笑いがこみあげます。

クモさんは「白鯨との戦い」でも書きましたけど今回大抜擢の可愛い男の子です。
高校生って感じが本当にかわいい~。
ストーリーではトニー・スタークがニューヨークでヒーロー活動をしていた彼を自宅まで訪ねてスカウトしてきての参戦です。
実はスパイダーマンは映画化権の問題があっておなじマーベル原作でもアベンジャーズへの出演は今までは難しいかったのですが今回は交渉がうまくいって出演となったのです。めでたいです。

ブラックパンサーはウィーンでのテロで亡くなったワカンダ国王の息子、つまり戦う王子様なんです。
父を殺した憎きウィンター・ソルジャーに復讐するために黒い猫のようなスーツでいきなり出てくるんですけど、あんたそのスーツどこでこしらえたの?と思ったのは私だけ?得意技は引っ掻きのようです。

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最後の最後にキャプテン・アメリカとアイアンマンは和解か、と思わせての番狂わせ。
実はバッキーは他にも良からぬことを・・・という秘密が暴かれ、どんどんストーリーは複雑になっていきます。
過去の積年の恨みが彼らを苦しめるんですね~。

家族を殺されて復讐したいのは敵も味方も王子もみな同じってとこです。
アイアンマンが好きな私としては傷だらけで一人ぼっちのトニーがかわいそう・・・。
一方、アメリカという国名をも背負って立つ正義のヒーロー、キャプテン・アメリカはあちこちで今回もモテモテです。

映画が終わっても今回も明るくなるまで座っていてくださいね。
お決まりのおまけ映像は2回あります。
なので最後にスパイダーマンが再び出るまで座っていてね。★★★★☆

監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ

これ参考になるよ!

 


サウルの息子 [映画【さ行】]

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ハンガリー映画です。
本年度のアカデミー賞授外国語作品賞・カンヌ国際映画祭グランプリ受賞。 

少し前から上映されていたのですが、間に合わないかもと思っていた時にオスカー受賞。
上映期間が延びて鑑賞することが出来ました。

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アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所。
1944年10月に実際に起きたゾンダーコマンドの反抗の日とその前日の2日間を追います。

映画が始まってすぐに気づくのは映画の画面がとても狭いこと。
フィルムの大きさが違う?
映画はワイドな画面が普通ですがこの映画は昔のテレビのような狭い画面になっています。

やがて歩き回る一人の男(ルーリグ・ゲーザ)に焦点が合います。
というより、この男以外は焦点が合っていません。
背景も何もかも他はぼんやりとぼかした画像、映し出されるのはこの男のアップばかり。

ここがどこなのかどんな状態なのかの説明もなく、セリフもありません。
胸に黄色い星のワッペンをつけた団体がトラックから降ろされシャワー室に進むように促すアナウンスが聞こえてきます。
シャワーの後は熱いコーヒーやスープ、その言葉を信じてすすむユダヤ人たち。
トラックに揺られてお腹もペコペコのはず。
そんな団体の横について一緒に進むサウル。
サウルと同様に背中に大きな赤い×印の作業着を羽織っている男たちがシャワー室の周りにたくさん集まっています。

やがてシャワー室が閉じる重い音、シャワー室というのは実はガス室でした。
水の代わりに出てくる毒ガスで断末魔の声が聞こえ始めます。

しかし、サウル達はそんな声を聴きながらもシャワー室に入る前にきちんと壁に架けられたユダヤ人たちの服を次々にフックから剥ぎ取り仕分けを始めます。
金品を抜き取ったあとの服は処分されるのでしょう。もう着ることはないのですから。
昔からなぜガス室はシャワー室だったのかとぼんやり考えていたのですが、そうか、ユダヤ人がもっている金品や宝石を確実に奪うには服を脱がせるのが一番だったんだと今回気づきました。

次にサウルはガス室に折りたたむように絶命した裸の死体を運び出します。
血や汚物で汚れた部屋をていねいに掃除していき、そしてまた次のトラックが着くと同じ事が繰り返される、そんな毎日に人間的な感情も言葉もすべて失っているようにみえるのです。

その日は、ガス室でまだ息がある少年が発見されます。
時々、まれにそんな事があるというのですが、その少年はやがてドイツ衛生兵により窒息死させられてしまいます。

お話が進むにしたがってわかってくるのはこのゾンダーコマンドと呼ばれるメンバーは収容者のユダヤ人から抜粋された人たちで、ガス室で殺された同胞の死体処理係でした。

つまりナチはユダヤ人にユダヤ人の抹殺も、死体処理も命令してやらせていたのです。
死体は焼却炉に運び焼却した後、骨は砕いて灰にして川に撒く、すべて証拠も無いように抹殺させていました。

しかしある一定期間を過ぎると、ゾンダーコマンドも口封じのために処分されてしまうらしいと噂がありました。
処分のXデーは近いとゾンダーコマンドの間では反乱や脱走の計画も練られているのですが、サウルはというとその死んだ少年の事で頭がいっぱいでした。

なぜかその少年を「自分の息子」だと言い張るサウル。

息子にはユダヤ式の葬式を行い、ラビ(ユダヤ教の宗教的指導者)に弔いの祈りを捧げてもらい、土に埋める。
ユダヤでは死体は燃やさず、土に埋めてやがて次の復活を信じる。
「息子を焼却炉で燃やしてはならない」、サウルはこの想いだけで動き始めます。

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解剖に回された少年の死体を探すサウル。
解剖を担当する医師もユダヤ人でした。
困りながらもサウルに死体を隠してわたしてくれました。

ではラビはどこにいる?収容所にはどこかにいるはずだと走り廻るサウル。
仲間たちは脱走計画の邪魔になってもただ息子の葬式の事だけに奔走し続けます。
息子の魂の再生だけがサウルの生きている証とでもいうように。

自分の危険を顧みず、狂ったように搬送者のなかからラビだという男を見つけだし、自分の服を着せて隠してかばい、脱走の日に息子の遺体を担ぎやってきた山奥。

ラビについに祈りを捧げてもらおうとした瞬間、ラビの沈黙。
祈りの言葉を知らないその男が本当はラビで無かったと察したときの落胆。
ラビを偽った男も収容所で生き残りたかったのです。

今更この悲惨なアウシュビッツの様子をみても何になるのかという人もいらっしゃるでしょう。
でも今また同じことが繰り返されないために、心に刻むことは必要ではないでしょうか。
制限された映像と、その奥から聞こえてくる音から収容所の現状を想像することを求められますがそれだけに怖くて重い映画でした。

ラストのサウルの顔に少しだけの救いも感じられる映画でした。★★★★

監督はハンガリーのメネス・ラスーロ監督、初の長編映画とのこと。 


ザ・ウォーク [映画【さ行】]

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高所恐怖症です。
高い所から下をみるのも嫌いですしジェットコースターも絶対に乗りません。
だからこそ、映画でしか体験できない風景が見てみたい。

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1974年のニューヨーク。
フランスのパリの大道芸人・フィリップ(ジョセフ・ゴードン=レヴィッド)が完成間近のワールドトレードセンターの間にワイヤーロープを渡し、綱渡りを実行した実話です。

気も遠くなるような高所での綱渡り、命綱も無し。
しかもパリからニューヨークにまでわざわざやってきてです。
報酬も無し、ただ歩きたかったから。

勝手に許可なくそんなことを試みるのは犯罪なわけで、この無謀な計画は密かに進められていきます。

なんでこんな事に憧れるのかは私にはさっぱりですけどやっぱり若さって事かしら。
25歳の綱渡りの青年の情熱。
地上411メートルにはどんな風景が広がっているのかを見てみたい、それだけ。

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ストーリーは少年期から。
パリのサーカス一座 パパ・ルディ(ベン・キングスレイ)に弟子入りしたころから始まります。
ある日、完成間近のワールドトレードセンターの記事をみつけるフィリップ。

タワーに取り憑かれたフィリップはパパ・ルディからロープの貼り方を学び、計画の協力者を集めてやがて渡米、ニューヨークでも仲間を集めて詳細にビルの情報収集し侵入の実行計画を立てていきます。

そんないきさつを、自由の女神の上からフィリップ自身が語る・・・という形式でお話は語られていくのですけれど、見どころはやはり実行の8月6日のシーンです。

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ビルの間に綱を張るのにも予定外のアクシデントでハラハラは続きますが、息を飲む綱渡りシーンは圧倒的です。
やっと終わったかと思ったら後ろに引き返し、今度は警官が駆け付けているのを避けてまた後ろに引き返すこと数回・・・。
こんなこと本当にやったの?
全てのものに感謝するためにロープの上でひざまずくフィリップの姿にくらくらです。

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今は911でのあの悲劇で姿を消してしまったワールドトレードセンター。
崩壊の瞬間は何度もニュースで流れ、映画にもなり、誰の脳裏にも負のイメージで残っていますが、建築中にはこんなことがあったのだということに驚きました。

3Dで観たかったんですが時間が合わずに2Dで鑑賞。
ストーリーより映像を楽しむ映画です。
3Dの為に作らていると思いますが、でも2Dでもじゅうぶんに震えましたよ。

主役のジョセフ・ゴードン=レヴィッドの魅力で魅せる映画かなとも思いました。  ★★★☆ 

監督は「バック・トゥ・ザ・フュ―チャー」「フォレスト・ガンプ」などの ロバート・ゼメキス。

 


戦場のメリークリスマス (NHKBSプレミアムシネマ) [映画【さ行】]

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イギリスのロックシンガー、デビッド・ボウイさんが1月10日に亡くなりました。69歳でした。
その追悼番組の一つでNHKBS、プレミアムシネマで放送された映画です。
監督の大島監督も2013年1月に既にお亡くなりになっています。

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 『戦場のクリスマス』(英:Merry Christmas,Mr.Lawrence)は大島渚監督の監督・脚本した映画で1983年5月の公開の映画です。英国アカデミー賞作曲賞を受賞。

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原作はサー・ローレンス・ヴァン・デル・ポストの『影の獄にて』。
作者自身のインドネシアジャワ島での日本軍捕虜収容所体験を基に書かれたものです。 

1942年のジャワ島。日本軍捕虜収容所。
戦争シーンが全く出てこない戦争映画で、男性俳優だけでお話は進みます。

収容所には約600人ほどの外国人捕虜がいるようで、日本に暮らしたこともある親日家で日本語も堪能な捕虜・ロレンス英軍陸軍中佐(トム・コンティ)をハラ軍曹(ビートたけし)が呼びつけます。

朝鮮人軍属カネモト(ジョニー大倉)がオランダ人男性兵デ・ヨンに不祥事を行ったので自分が処理をする、ロレンスには証人になってもらうというのです。

デ・ヨンに性的行為を行なった罪で切腹をいいつけるハラ。
そこにハラの上司、ヨノイ陸軍大将(坂本龍一)がやってきて切腹は一旦中止となります。
ヨノイはこの収容所では一番の責任者、彼の命令は絶対です。

その後、裁判に出席したヨノイは日本軍の輸送隊を襲撃して捕虜になった英国陸軍少佐・ジャック・セリアズ(デビット・ボウイ)をひと目みて魅せられてしまいます。
銃殺刑を言い渡されたセリアズの命を助け、自分の収容所に収容させるのです。

やがてセリアズは収容所で厄介な存在になっていきます。
一番はヨノイの態度が日本軍の部下がみてもおかしくなってきたこと。
ロレンスはセリアズの回復を手伝うようにと彼の収容された集団収容所に移動させられますが「ヨノイは君の事が好きなんだな」と笑うほどです。

やがてカネモトはヨノイの命令で切腹させられます。
それをみせられた被害者デ・ヨンが舌を噛み切り自殺するという事件が同時に起こり動揺する捕虜たち。
動揺を鎮めるためにヨノイは24時間の断食の『行』を行うように命令、不満を感じる捕虜たち。
日本人の精神論が西洋人に伝わる訳がありません。

それに逆らうセリアズは死んだデ・ヨンの為にと赤い花を摘んで、花の下に隠してまんじゅうを捕虜たちに分け与えます。
ことごとく逆らうセリアズに「お前は悪魔か」と怒るヨノイ。
そして収容所の病室からみつかった盗聴器の責任を押し付けられたロレンスが拷問のあげくに処刑されることとなるのですが・・・。

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その後セリアズとロレンスは独房に入れられ、壁を挟んでお互いの過去を思い出していきます。
セリアズが戦争に志願した理由がここで語られ、やがて乾いた戦場は美しい英国の庭とセリアズの愛する弟の歌声が印象的なシーンに変わります。 

セリアズは障がい者だった弟の心を守り切れなかった後悔で今も苦しんでいました。
一方、ヨノイは2・26事件の青年将校の生き残りで自分だけ生き残ってしまったという負い目を抱えて生きています。
ヨノイはセリアズを恋愛感情で好きというものではなく、思わず憧れてしまう綺麗な存在というように思えました。
ヨノイは結局セリアズにはなにも告げることが出来ませんでした。

セリアズは捕虜長をかばいヨノイの頬に敵をも愛すというキスをする有名なシーンのあと、生き埋めの処刑にされてしまいます。 

そしてこの映画には2回切腹シーンも出てきます。
最初のカネモトの不祥事の処刑と、ヨノイを惑わすセリアズの命を狙った日本人軍人の2人です。

「切腹を見ずして本当の日本人をみた事にはならない」というハラ軍曹のセリフにも象徴されるように日本軍人は自分たちを侍だと思って奮い立たせていたのだと、最近の戦争映画にはみない武骨な展開には感心してしまいます。

西洋人の捕虜たちと日本軍人。
ロレンス中佐は宗教観、道徳観、 組織観が全く違う双方のなくてはならない解説者という存在です。

死ぬことは怖くない、自分はお国に命を捧げているというハラ軍曹。
お前はなぜ捕虜になったのか、恥を知らないのかとロレンスに尋ねます。
ロレンスは捕虜になるのは恥ではないと答えますし、のちに同じ捕虜のヒックリー捕虜長(ジャック・トンプソン)には「日本人は個人ではなにも出来ず集団で発狂した」と話します。

この映画、デビッド・ボウイが美しい、でもラストのビートたけしのアップとセリフの意味がよくわからない・・・という感想しか頭に残ってなかったんですが、歳を重ねて改めて今見ると死ぬことに対する双方の考え方の違いと、戦争時に正しい考え方を持つことの難しさが迫ってきました。

ラスト、4年の年月を経て、立場は変わり日本が戦争に負けた後に逮捕されたであろうハラ元軍曹に会うロレンス中佐。

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明日処刑されるというハラ軍曹に涙がこぼれてしましました。

ハラは自分が過去にクリスマスプレゼントで命を助けた時と同じで今回は「ロレンス、俺を助けてくれよ」と命乞いをしているのか。
「メリークリスマス、ミスターローレンス、メリークリスマス・・・」と笑うハラのアップに、前半これでもかと語られた日本軍軍人の中に宿っていた武士道精神の崩壊が感じられてしまうのです。


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