サンザシの樹の下で [映画]
『HERO』(02)、『初恋のきた道』(00) のチャン・イーモウ監督作品。
中国で300万部を売り上げた華僑作家エイ・ミーのベストセラー小説を映画化したもので、
原作者の友人の手記を基に書きあげた『実話』なのだそうです。
涙なしでは見れない胸がキュンとする純愛のお話です。
ネタばれしないと感想が書けない作品でしたのでこれから映画を見る方、ラストを知りたくない方は
読まないでね。
時は1970年初頭・文化大革命下の中国。
都会育ちの女子高校生ジンチュウ(チョウ・ドンユイ)達数人と引率の先生は、
「学生は農民から学ぶべきだ」という毛主席の教えで農村を訪問していました。
村の途中には有名な“サンザシの樹”があります。
実はこの木は抗日戦争の時に兵士が何人もここで殺されその兵士の血を吸い、
本来白い花が咲くはずの樹に赤い花が咲くという言い伝えがある木でした。
この話は革命精神の象徴となるもので、ジンチュウ達は毛主席の教えを確認します。
農村での生活が始まったジンチュウは、スン(ショーン・ドウ)という背の高い青年に出会います。
スンはこの村で地質調査の仕事に就くエリート青年でした。
明るく素直に好意を示す彼に次第に惹かれて行くジンチュウ。
彼はお給料も良いらしく、万年筆や食料など色んなプレゼントもくれますし、とにかく優しい。
しかし文化大革命下、ジンチュウの家は父が反体制派として強制労働に送られており不在、教師の母は知識人ということでいじめられている家族でした。
(文化大革命の時代は農民、労働者、軍人が上位で、地主、資本家、知識人は下位の階級。
ジンチュウの母は教師という知識人、父は地主であったため下位の階級。)
女手一つで、仕事の他に内職をしながら3人の子供たちを育てる貧しい母の為にもジンチュウは決して他人から批判される事をやってはいけない環境にありました。
だから身分違いな二人の恋は秘密に深まっていきます。
でも都会に戻ったジンチュウが困っている時には直ぐに駆けつけるスンの姿は微笑ましさを超えて
ストーカー並なんですけど。(^.^;
彼ったら高校の体育の授業まで覗いているし、食料も運んでくるしね。
そんなある日、ジンチュウは学校の作業で足に火傷を負います。
病院に行く事を嫌がる彼女にスンは自分の腕を傷つけてまでも無理やり自分も通う軍の病院に連れて行きます。なるべく知っている人に会わないように。
彼の彼女を想う気持ちに触れ、病院帰りの二人乗りの自転車ではしゃくジンチュウ。
しかしその様子はジンチュウの母に見られ、二人の仲が思いっきりばれてしまいます。
母はスンに、『ジンチュウは高校を卒業後は教師になる、本採用が決まるまでは絶対会わないで』と頼みます。
泣きながら二人は母の言葉を聞き別れますが、彼は「永遠に彼女を待つ」と伝えます。
その後しばらくスンからの連絡は途絶えましたが、やがてジンチュウの耳には彼が病院に入院していていて病名は「白血病」だと伝わってきます。
ジンチュウは高校の教師になっていましたが学校には3日間の休みをもらい、母には別の言い訳をして彼に会いに病院を訪れます。
やっと会えた彼はただの定期検診だと話します。そして病院側も。
しかし彼は自分の死が近づいている事を知っていました。
それから彼と彼女との短い時間が涙を誘います。
いよいよ彼が危ないと聞いて、彼が見たがっていた赤い服を着たジンチュウがベッドに横たわるスンと最後に会う病院のシーンは号泣ものです。
お話はそこで終わります。
彼の遺体は遺言でサンザシの樹の下に埋められ、彼女はサンザシの樹の下に埋まる彼に毎年会いに行ったがやがて村はダムの下に沈み、彼女は留学で中国を離れるという文字が画面に映されます。
文化大革命の時代、幼い二人が身分違いの恋に悩み、やがて彼が難病にかかり死んでしまう。
そんなシンプルな悲恋ストーリは切なくて泣けます。
でもチャン・イーモウ監督作品ですから実はその裏には、もうちょっと重い話があるんですね。
ここからネタばれのネタばれです。
と、いうのは彼が病んでしまった「白血病」という病気の事です。
彼は「給料がいい仕事」をしています。
都会と田舎を行ったり来たりを苦もなくやってのける健康な青年が就いていた地質調査という仕事はなんだったのでしょうか。
足をセメントを捏ねる作業で火傷してしまったジンチュウを連れて行った軍の病院は普通の人民は通えない病院なのでは?
彼が働いていた作業テントに訪れたジンチュウに彼の同僚たちが「白血病」にかかった人は他にもいるような話をします。
そして彼の死にゆく姿は体が青紫で、点滴やチュ―ブにつながれて・・・。
だだ泣かせたい映画ならここまでは表現しない壮絶な姿。
二人が知りたがっていた白いサンザシが本当赤い花を咲かせたのかもわからぬままです。
文化大革命中の中国では、東西冷戦や中ソ対立を背景に核開発を進めていたようです。
「地質調査」、「軍の病院での定期健康診断」「死の床を囲んでいた沢山の軍服」の人たち。
彼のあの最後の姿は放射線被ばくの症状で彼の本当の仕事はウラン発掘だったのかもしれません。
このあたりはあまりにさらりと描かれているので、美しい自然の風景よりも目立ちません。
それは日本人だからピンとこないのか、監督の意図的に語れていないのか。
のほほんと観ていると難病と身分違いの悲恋で終わりそうなんですけど
そんな危険な作業をさせられていた人たちには語られなかったであろう放射能の恐ろしさと、当時の政策への批判メッセージが込められている映画なのかもしれません。
原作を読めばもっと分かるのかもしれませんが残念ながら日本語訳は出ていないそうです。
ヒロインを演じるのは、チャン・イーモウ監督が国内の芸術学校を探し回り、2,500人の中から抜てきした新星チョウ・ドンユィ。可憐です。
これからどんな女優さんに育っていくんでしょうね。 ★★★★☆
梅田ガーデンシネマにて
監督:張藝謀(チャン・イーモウ)
静秋(ジンチュウ)/周冬雨(チョウ・ドンユィ)
スン/竇驍(ショーン・ドウ)
静秋の母/奚美娟(シー・メイチュアン)
2010年・中国映画・114分










クロ―ヴさん、こんにちは。
niceありがとうございます。
by キキ (2011-09-18 19:20)